Vol.130|ポートランド旅行記・前編

アメリカの田舎で出会った電球の真髄
投稿日:2017,11,08
Illustration by Hiroyasu Shoji

遅めの夏休み

年に一度は休みを取ってどこかへ一人旅に・・・、というのが私の毎年恒例のイベントになっています。今年は、9月の中旬に少し遅めの夏休みをとって、アメリカ北西海岸のポートランドに行ってまいりました。何故、旅先にポートランドを選んだのかというと、今年、建築家の隈研吾さんが設計した日本庭園の文化センターが竣工したのでそれを見に行くというのが公の理由なのですが、もう一つ、ポートランドの近郊にウィラメットバレーという有名なワインの産地があることも私がこの街を今年の旅先に選定した裏の理由だったのです・・・。

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Vol.129|バーの照明は、1%まで絞る!?

美暗照明の今
投稿日:2017,10,19
photo by LIGHTDESIGN INC.

バーの照明デザイン

秋も深まる季節です。今日は、お酒を楽しむバーという空間の照明について考えてみたいと思います。バーは照明的に、家庭はもちろん、一般的な飲食店ともかけ離れた暗さの特徴をもつ場所です。この夏に友人のバーテンダーから頼まれて、彼が経営するバーの照明を改修をするというプロジェクトに携わりました。その仕事を進めていく中で、バーに代表される、 “暗い空間”での照明デザインがここ最近変わって来たことを感じると共に、そういった空間での照明デザインの面白さを再確認するような出来事がありました。

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Vol.128|仕事の方法・ケチをつける価値

ダメだしの有難さ
投稿日:2017,09,28
photo by Sole Treadmill

ケチをつける客

銀座のとあるバーを舞台とした面白い小話があります。そこのバーテンダーの話によると、ある常連客はいつもサイドカーというカクテルをオーダーします。そしてバーテンダーはいつも「お味はどうですか?」聞きます。すると毎回「不味い。」と言うのだそうです・・・。

そのバーテンダーは、いったい何が不味かったのか?毎回緊張しながら工夫を凝らしてサービスし続けたそうです。ところが、ある時その常連客が他のバーに行って同じように頼んで出てきたサイドカーに対して、「これは、サイドカーじゃない、サイドカーの作り方を○○というバーのバーテンダーに聞いてこい!」と、いつも不味いと言っていたバーテンダーの名前を挙げたというのです。

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Vol.127|白色光を見直してみる!

白い光?嫌じゃないかも・・・
投稿日:2017,09,14
photo by meltedplastic

LEDの時代になって

これまで照明用の光源というのは、白熱電球のほうが暖かいし、心も温まるし、色も綺麗に見えるし良いんじゃないですか? 私を含めた照明デザイン業界では、そんな風に「白熱第一主義」を謳っていた節がありました。

とりわけ白熱電球の中でもローボルト(12V)ハロゲンランプは、他の白熱電球に比較して色温度がわずかに高く、すっきりとした印象の光です。当然演色性も高く、美術館や高級な宝飾店の照明デザインをまとめる時には、ここぞとばかり小指の先ほどの小さなローボルトハロゲンランプを光源とした照明器具を使ったものです。

また、公共施設などでどうしても寿命の長い蛍光灯を使わなければならない時も、「電球色」と表記された光源を選んでおりました。もう振り返れば三十数年間も白熱支持をしていたにもかかわらず、実は最近になって白色の光源も悪くないな・・・!と私の気持ちに何やら小さな変化が起きているのです。

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Vol.126|人生は70からが面白い!

京都で”男は70から”と教えられた
投稿日:2017,07,07
photo by Manuel

京都のプロフェッショナル

それまで京都という町には何十回と足を運んでいて、時折行ってみたくなる好きな場所やほっとできる寺社建築も持ち合わせておりました。しかし、そこには親戚はもちろん親しい知人すらいなかったので、私はいつも京都好きの観光客の一人にすぎませんでした。ところが、数年前にご縁を得て京都で仕事をさせていただくようになってから、この街が少し優しく私を迎え入れてくれるように感じられるようになったのです。

昨年はちょうど今頃、京都の料亭である和久傳がプロデュースして、京丹後から運ばれるおいしい野菜を中心とした朝食をいただける新しい業態の店をつくるプロジェクトの照明を担当させていただきました。このプロジェクトを通して京都での店づくりに関わる色んな職種のプロフェッショナルな方々にお会いすることができ、さらに京都の方々の独特の世界を垣間見させていただきました。幸いにも、これをきっかけとして、高台寺和久傳(それは立派な数寄屋なのです)の照明デザインものちに手掛けることになり、そこでもさらに様々なプロフェッショナルの方々と出逢うことが出来ました。

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Vol.125|♪あー水色の・・・

ホスピタリティが感じられる車寄せ
投稿日:2017,06,22
photo by Hiroyasu Shoji

水色の間接照明

♪水色の・・・の次に、「雨~・・・」とすぐに連想する人は、1980年代前半に大学の製図室でラジオを聞きながら図面を書き続けていた人に違いないでしょう!(そう、私のことです。)

その頃、大ヒットしていた八神純子さんの「みずいろの雨」、私なんぞは、折に触れ今でもその曲が頭の中に響きまわっています。20代前半の建築学科の学生は、自分の設計の課題や、先輩のコンペの手伝いなどで、日夜製図室を棲み処とし、心の友はFMラジオもしくは誰かがかけるカセットテープデッキから聞こえる「みずいろの雨」だったのです。

・・・・いきなり回想風の出だしになってしまいましたが、今回のテーマは、水色の間接照明です。間接照明へのこだわりは、単に納まりやディテールを超えて、光源のスペクトルに及んできたのです。ここのところ、数年をかけて改修を行ってきた新宿のとある超高層ビルの車寄せの照明プロジェクトについて話してまいりましょう。

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Vol.124|スマート照明が面白い

照明のIoT化で出来ること
投稿日:2017,06,09
photo by LIGHTDESIGN INC.

最近ハマっているもの

以前このブログで、照明のスイッチについて取り上げ、沢山の反響をいただきました。

照明のスイッチを変えるだけで、今まで瞬時にパチッとついていた照明が数秒間かけてフワーッと点灯したり、心地よいセンサー機能が使えたりと、いつもの暮らしがちょっと楽しくなるものがいろいろあるよ・・・という内容でしたが、この話がなかなか好評だったので、こういった良いカンジに照明のコントロールをしてくれるような製品が他にもないかと探していました。

すると意外にも、家電量販店で、照明が大好きだという店員さんに優れモノを教えてもらいました。

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Vol.123|城下町で門燈の意義を思い出した

ホーロー引きのセード門燈
投稿日:2017,05,25
photo by LIGHTDESIGN INC.

九州の城下町にて

昨年の夏から秋にかけて、大分県竹田市のとある現場へ何度か足を運ぶ機会がありました。竹田市は、大分空港から車で2時間ほど九州山地に入ったところにあって、豊かな湧き水と共に、美しい城下町の街並みが広がっていました。

この町にある、かつてパーマ屋さんだった古い建物を友人のランドスケープデザイナーが生まれ変わらせる・・・エネルギーを極力使わない、これからの新しい暮らしの在り方を模索する研究拠点にする!というプロジェクトに感銘を受け、その照明デザインを担当することになったのです。初めてこの町を訪れ、散策していると、ある一軒家のお宅の玄関先にある非常に印象的な明かりと出逢うことができました。

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Vol.122|自動車ヘッドライトの変遷

自動車の明かりが夜景を変える
投稿日:2017,05,11
photo by Devin Kenna

車のライトが面白い

こんにちは、東海林弘靖です。今回は自動車のヘッドライトの話をテーマにブログを綴ってみたいと思います。

最近、車のヘッドライトがLED化され大変面白い進化を遂げています。私たち照明デザイナーは、主として建築物を対象とした光のデザインを行っていますので、車の照明ましてヘッドライトのデザインにまで踏み込むことはまずありませんでした。しかし、都市の夜景という観点では、この車の照明が極めて大きな役割を果たしているのです。

まずは、そんな夜景を作り出しているヘッドライトとテールランプのお話しからご紹介いたしましょう。

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Vol.121|照明デザイナーが案内する東京ナイトツアー

東京は夜こそ面白い
投稿日:2017,04,26
photo by Zengame

ライティング・フェア2017にて

去る3月7日から10日までの4日間、東京ビッグサイトにて「ライティング・フェア2017」が開催されました。これは2年に1度開催される照明の総合見本市で、今年は4日間で7万人を超える来場者があったとのことです。光のソムリエでは前回の開催(2年前)から私も所属する日本国際照明デザイナーズ協会(IALD Japan)がこのイベントに全面協力することになったとご報告しておりましたが、今年はその体制での2回目の開催、更なる面白い企画を実施することになったのです。今日はその特筆すべき面白いイベント「アフターダークツアー」をレポートします。

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。




Vol.121
Vol.121 照明デザイナ−が案内する東京ナイトツア-

Vol.122
Vol.122 自動車ヘッドライトの変遷

Vol.123
Vol.123 城下町で門燈の意義を思い出した

Vol.124
Vol.124 スマート照明が面白い

Vol.125
Vol.125 ♪あー水色の・・・

Vol.126
Vol.126 人生は70からが面白い!

Vol.127
Vol.127 白色光を見直してみる!

Vol.128
Vol.128 仕事の方法・ケチをつける価値

Vol.129
Vol.129 バーの照明は、1%まで絞る!?

Vol.130
Vol.130 ポートランド旅行記・前編


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