「Light+Building 2012」レポート

技術もデザインも、すべてはより良き人生のために

投稿日 : 2012.06.21


これからの照明が見える見本市

今回は前回の予告通り、この春にフランクフルトで行われた国際照明・建築技術専門見本市「Light+Building(ライトアンドビルディング) 2012」についてレポートさせていただきます。
 
まず、今年の大きな特徴は、ヨーロッパでもようやく展示の大部分がLEDになっていたということです。前回は2年前の開催で、LEDの製品は半分くらいという印象でしたが、それが今回は全体の85%くらいを占めていたように思います。顕著なところで言えば、ドイツの一流メーカー「ERCO(エルコ)」の新作の98%はLEDだと聞きました。

やはり、日本同様、だいぶ定着してきたなぁという印象です。ヨーロッパでLEDの普及が遅れている理由の一つは、そのマーケットにアラブの国々があるからだとも言われています。つまりオイルマネーで潤う国々ではエネルギーの節約にあまり積極的でないこと、気温の高い地域のため熱に弱いLEDがなじまないことなどが理由のようです。
 
しかし、重い腰を上げたヨーロッパでは、日本と違った解釈でLEDの特徴をうまく生かした楽しいプロダクトが数多く見受けられました。





あの“逸品”もLEDになって登場!


会場に展示されたLED製品は単純に白熱電球からの置換えもあれば、LEDならではのものがありました。

上の写真は世界中にファンの多い照明器具のひとつ、「LUXO(ラクソ)」のデスクスタンドです。1937年にノルウェーのJ.ヤコブソン社から発表されて以来、その使い勝手の良さから長年愛されてきたこの照明も当時の復刻モデルとしてLED化されていました。
 
そして、面白いことに、別のブースでこのLUXOのシルエットを発見! 近づいてみると、ちょっと様子が違うことに気づきます。


実はこれ、LUXOを模った薄っぺらな板状の照明器具で、セードの形をした下の部分にはLEDが細長く配置されているのです。

これを作ったのは、「光の魔術師」「光の詩人」とも呼ばれる世界的照明デザイナー、インゴマウラー氏です。LUXOへのオマージュ、そしてLEDだからこそできる遊びゴコロを加味したデザインには、“楽しい!やっぱり照明っていいな〜!”と思わずにはいられませんでした。




光のソムリエが注目する新進メーカー

会場には他にもLEDの特徴を活かした面白いデザインが沢山ありましたが、私が特に注目したのはイタリアの「Viabizzuno(ヴィアビッズーノ)」というメーカーです。ウイットに富んだ可愛らしいデザインが特徴で、本棚をモチーフにしたブースがとても目を惹きました。


本棚から本のような照明がいくつも飛び出しています。




天井から伸びている長い棒はLEDダウンライト。好きな方向に曲げて使うようです。




左:こちらは真ん中に飛び出るデスクライトが内蔵されたテーブル。
右:ブースでは飲み物も提供しているのですが、食器などすべてがカッコイイ!

 



最新照明素材が示す今後

この見本市に来たら、絶対外せないのがヨーロッパを代表する2大メーカー、ドイツの「OSRAM(オスラム)」とオランダの「Philips(フィリップス)」です。
 
この2社に共通していたのが、次世代光源である有機EL(OLED)を大々的にフィーチャーしていたことです。各社ともブース入口に有機ELを使った大きなオブジェを配置し、その開発と普及への取り組みを積極的にアピールしていました。

左:OSRAMの巨大な円形オブジェ。棒の先についた丸い板状の部分に有機ELが付いていて、点滅を繰り返していました。
右:一方、Philipsは三角形の有機ELが天井からぶら下がっていて、光を発しながら有機ELパネルが波打つように動くという、大掛かりな演出でした。


この2社を見て、照明のLED化という山を登り切ったヨーロッパ市場がこれから向かうのは有機ELだということを再認識させられました。とは言え、まだほとんどがコンセプトのみで商品化はまだ2〜3年位先だろうと予測されているのですが、LEDの普及が急速に進んだことを考えると意外にもっと早いかもしれませんね。



人と照明のあり方を示す言葉に感動

そして、最後にご紹介したいのが「iGuzzini(イグッチーニ)」というイタリアのメーカーのブースです。このメーカーがテーマにしていたのは「芸術、文化と技術の融合」というもので、商談スペースの天井面にルネッサンス期を彷彿とさせる絵画が描かれ、床面にはウォークオーバーLEDにイタリアの風景イメージを浮かび上がらせていました。


ここで最も印象的だったのは、実はブースの壁に書かれた以下の言葉だったのです。

「Better Light for a Better Life」

この言葉はまさに言い得て妙でした。日本でもヨーロッパでも省エネやエコという大きなテーマを掲げているのは同じものの、それぞれの見本市で何が違うのだろうと考えたとき、この言葉でしっくりと理解できた気がしました。
 
省エネやエコも大切なのですが、それ以前に照明は良い暮らし、良い人生のためにあるということをこちらの人々は理解して取り組んでいるのです。まさに照明デザイナーが常に考えなければならないことなのですが、今回改めて実感させられた、そんな見本市でした。



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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。






vol.01 光の質にこだわっていますか?


vol.02 近未来の照明生活


vol.03 電球シルエットは不滅?


vol.04 ブラックアウト・停電


vol.05 照明国際見本市での小さな楽しみ


vol.06 「Light+Building 2012」レポート


vol.07 デイライト・ミュージアム


vol.08 ファッションデザイナーが作ったホテル


Vol.09 光をテイスティングする!


Vol.10 魅せられたルミナーレの光


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