Vol.53│太陽とのつき合いかた

所変われば…

投稿日:2014,06,19
photo by Naroa

 

南半球に思いを馳せて

世の中ではサッカーのワールドカップ一色!な今日この頃、サッカーファンの方々は開催地ブラジルとの時差とも戦いながらテレビ観戦に熱くなっていることでしょう。ブラジルは日本から考えると地球の真裏で、時差だけでなく様々な条件が異なっています。そもそも南半球にあるわけですから、季節が日本とは逆で、いま冬ということになります。

それから、地球の自転の関係で水道の排水溝に流れ落ちる水のうず巻きの回転方向も日本とは逆です。そんな日本とは正反対の場所で光のことを考えてみると・・・?
実は太陽も日本がある北半球とは異なった動きを見せるのです。本日はそんな南半球の光事情を考えてみようと思います。





太陽はどっちを通る?

画像出典:日刊ニュージーランドライフ

日本では太陽は東から上り、南を通って、西に沈みます。しかし、これはあくまで北半球での出来事で、南半球では東から上った太陽は、北を通って西に沈むのです。

日本では太陽が一番高くなる真昼に太陽は南にあるので「南中」と言いますが、一方南半球では真昼に太陽が北にあるので、「北中」と呼ばれるのです。つまり、日本では昼間に家の中に太陽がたくさん入るのは南向きの窓なのですが、南半球では日本では暗くて嫌われがちな「北窓」がむしろたくさんの日射が入るという訳です。

もちろん、太陽だけではなく他の天体も同様に逆さの現象をみせるので、月の満ち欠けが南半球では逆となり、三日月の欠け方が左右反対になります。また、夜の星座も逆で、例えばオリオン座など日本とは上下逆さまに見えるのだそうです。

 



“北窓、バンザイ!”なのか?

そこで気になったのが住まいにおける採光です。南半球では昼間に太陽は北側から入るので、家は北向きの庭や窓が明るく暖かくて好まれるのだろうと推測しました。そこで南半球、オーストラリアのシドニーに在住の知人に聞いたところ、どうやら事情が予想とは異なっていました。確かに、北窓が日本でいう南窓にあたるので、北側の北面採光の部屋のほうが明るいけれども、北窓はあまり良くないと言うのです。

その理由は日光の強さにありました。実はオーストラリアは日本よりも日光が非常に強く、紫外線は5倍~7倍あるのだそうです。そんな強い日差しをまともに受けてしまう北窓(日本における南窓)はとても暑くなりすぎるので、むしろ南向きの南窓の部屋のほうが好ましいと言うのです。太陽に背を向けている南窓であっても日本とは違って十分な明るさが得られるほど、日光が強いとのことでした。

以前、この前身ブログで「北窓、バンザイ!」と題し、日本では嫌われがちな直射日光が入らない北窓の隠された魅力を紹介したことがあったのですが、地球上ではむしろ直射日光が入らない窓のほうがむしろ好まれる所もあったというわけです。これは気候・風土によるものなので、なにも南半球でなくとも北半球の暑い地域、たとえば日本の沖縄などでは直射日光を避ける採光のほうが好まれるそうです。

まさに、所変われば価値観も変わる!井の中の蛙ではいけませぬ! 日本の常識が必ずしも世界で通用するわけではないのですね。しかし、世界中どこでも同じ考えであるのは、私たち人間が太陽とどのように付き合うのか? そのことは共通のテーマなのでしょう。


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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。






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