Vol.87│何でもかんでも光るとオシャレか?

コラー!光るなー!
投稿日:2015,11,26
photo by Ricky Romero

季節の風物詩も使い方を間違えれば・・・

街はクリスマスイルミネーションで賑やかな今日この頃、お家の中でもクリスマスツリーやオーナメント、イルミネーションライトを飾っているという方もいらっしゃるでしょう。普段とは違って、華やいだ雰囲気になる素敵な季節がやってきました。しかし、何でもかんでもキラキラと光らせたり、どこもかしこもライトアップする・・・という発想には眉をひそめてしまうくらいおかしいな!と思うのです。

寒い夜にキラキラやライトアップされて輝くオブジェクトは、一般には美しく心に染み入る光景なのですが、何もここまでやらなくともいいよね! そう、やりすぎているものや思いを伝えるコンセプトのないものには、思わず目をそむけたくなるのです。



植木鉢は光らなくていい?

最近、そんな疑問を聞いたのは、“光る植木鉢”という商品でした。調べてみると、それは白いプラスチック製の植木鉢で、中に白色LEDが仕込まれているという代物。暗いところで植木鉢全体が白く光るものだそうです。そして、「光ってオシャレ!」というようなキャッチコピーがつけられていたのですが、果たして植木鉢が光ることはどれほどオシャレなのか?と疑問を抱きました。そもそも物体は何故光るのか?光るには何か理由があるはずです。

以前、Vol.52 光るには訳があるでも述べたように、地球上のさまざまな光るモノたちには光る理由や目的があります。植物や生物では生き延びるため、種の繁栄のために光るのです。一方、人間が生み出すモノではどうでしょう?そう考えたとき、ふと思い出したのが“デコトラ”の愛称で知られる、たくさんの電飾でデコレーションしたトラックでした。



光は計画をもって美しく

photo by Kanon Serizawa

そう、トラック野郎が作り出す夢の乗り物“デコトラ”なのです。最近ではこのようなトラックも随分と少なくなってしまいました。しかし、ついこの間までは、夜の高速道路やサービスエリアで一際輝きを発するこのトラックがいたことを思い出します。デコトラは写真からもわかる通り、いったい何があったのか?と聞きたくなるばかりにたくさんの電飾がついていますが、これらの光る理由は明確で、それは「アイデンティティの誇示」なのでしょう。孤独な夜間の運転を職業とする気高きトラック運転者は、いわば、戦いに出る武士が鎧に身を包み、他の勢力とは異なる己を張って戦場に出る・・・ことに類似していると考えるわけです。あるいは、そのような電飾鎧に身を包むことでたくましい姿を確認したいのかもしれません。シンプルにいえば、真っ暗な高速道路上ですれ違うトラックに自分の仕事の存在感を示したいのでしょう。

ところが、植木鉢はいったいどんな理由で光らねばならないのでしょうか?植木鉢が光るとかっこいいのでしょうか?
光には危険な落とし穴があるように思えます。暗い中で光れば、まず間違いなく目立ちます。そして、普通の場合は、闇とのコントラストがあって美しい!と感じます。しかし、その先が大事なのです。その美しさは、見れば見るほど深い美しさを感じるのか?また見たいと思うのか?そこに物語を感じることができるのか?そこが大事です。輝く背景に感じる必然性、理由が必ず必要なのです。

最近LED光源の発達で沢山のLEDアイテムが作られるようになりました。おそらく「こんなもの光らせたら面白いんじゃないの!売れるかも!」と考えてつくられた商品群なのでしょう。しかし、思いを伝えるコンセプトがないものを目の当たりにすると、エネルギーを費やす意味を見いだすこともできず、とても残念に思います。私たち光のユーザーは、多種多様にあふれる光物たちの中から、正しき光物とそうでないものをしっかりと区別する力量を身につけたいものです。

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。




 

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